地球温暖化対策として注目されている「カーボンニュートラル」は、もはや一部の環境活動家や政策関係者だけの話題ではなく、私たちの日常やビジネスにも直結する重要なテーマになっています。
猪瀬直樹氏の著書『カーボンニュートラル革命』は、その現実と日本の立ち位置を浮き彫りにし、今後私たちがどのように行動すべきかを考えさせられる内容でした。
ここでは、本書の内容を踏まえて、特に印象的だった三つの視点から考察をまとめていきます。
考察① 日本は世界から取り残されている!?
日本はカーボンニュートラルの流れに出遅れているといえます。
本書では、すでに世界の多くの国々が再生可能エネルギーへのシフトや電気自動車(EV)の普及を急速に進めている一方で、日本は依然として原子力や化石燃料への依存から脱却できていない現状が明かされています。
特に、エネルギー基本計画における原発の扱いや再エネ導入のスピード感のなさが、日本の対応の遅れを象徴しています。
たとえば、EUや中国では再エネ投資が国家戦略として位置づけられており、EVインフラも急速に整備されています。
一方、日本では自動車産業の要であるトヨタをはじめとする大手メーカーがハイブリッド車(HV)に固執し、EV戦略に出遅れたことが指摘されています。
このままでは、日本の産業競争力が世界から取り残されるリスクも無視できません。
世界基準から目を背けず、スピード感を持って変化に適応することが求められています。
考察② 成長のチャンス
カーボンニュートラルは「環境対策」だけでなく「ビジネスの再定義」でもあります。
本書では、SDGs(持続可能な開発目標)を軸にした新しいビジネスの潮流に注目し、それに乗り遅れている日本企業の現状が語られています。
脱炭素はコストではなく、企業価値を高めるための戦略であり、経済と環境を両立させる重要な鍵でもあります。
具体的には、再エネ導入による電力の地産地消や、循環型経済への転換といった取り組みが、海外ではすでに企業の評価指標として活用されています。
さらに、ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)の拡大によって、サステナブルであることが企業存続の条件になりつつあります。
こうした中、日本の企業が「従来型の経営」から抜け出せないままでいると、グローバル市場での信頼や投資対象としての魅力を失ってしまいます。
環境意識の高まりは脅威ではなく、むしろ新たな成長のチャンスとして捉えるべきです。
考察③ 意識改革で未来を変える
市民一人ひとりの意識と行動も、大きなカギを握っています。
カーボンニュートラルの実現は、政府や企業だけでなく、私たち個人にも関わる問題です。
本書では、ライフスタイルの変化が不可欠であることが繰り返し語られており、例えば電力会社の選び方、通勤手段、消費行動など、日々の選択が社会全体のエネルギー構造に影響を与えることが示されています。
また、自治体や地域単位での再生可能エネルギー導入の取り組みも重要です。
すでに一部の地域では、地元の自然資源を活用してエネルギー自給率を高めるプロジェクトが進められています。
こうした動きは、単なる環境対策にとどまらず、地域活性化にもつながっています。
個人ができることは小さくても、集まれば大きな力になります。
未来を変えるには、日常の意識改革が出発点になります。
まとめ
『カーボンニュートラル革命』は、日本がどのように地球規模の変革に向き合うべきかを、強い警鐘とともに示してくれる一冊でした。
環境のためだけではなく、自国の産業や生活を守るためにも、変化を恐れず進化していく姿勢が必要です。
遅れている現実を直視し、国・企業・個人がそれぞれの立場からできることを始めることこそが、持続可能な社会の実現につながっていくのではないでしょうか。
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