弦本將裕さんと辻盛英一さんの共著『仕事は「個性」で決まる』は、就活やキャリアに悩むすべての人に届けたい一冊です。
本書は、「仕事において求められるのはスキルよりも、その人らしさ=個性である」という主張を軸に展開されており、自分の特性に悩む人に新しい視点を与えてくれます。
考察①:「強み」より「らしさ」が大事
どんなにスキルがあっても、長く続けられなければ意味がありません。
自分に合わない仕事で無理をしても、結果的にパフォーマンスは落ちてしまいます。
本書では、「得意なこと」より「自然にできること=らしさ」に注目することの大切さが語られています。
たとえば、細かい作業が得意だけどそれが苦痛に感じる人と、そこまで得意ではなくても楽しく取り組める人がいたとします。
後者のほうが、長期的にはパフォーマンスが高くなる可能性があるというのです。
この考え方は、一般的な「強みを活かす」という就活のセオリーとは真逆ですが、現実的でもあります。
自分にとって「楽にできること」は、周りから見ると魅力的な個性かもしれません。
その感覚を信じることが、仕事選びの重要なカギになると感じました。
考察②:評価軸を「自分基準」にする
仕事の悩みの多くは、「他人と比べること」から始まります。
誰かのキャリアや実績を見て焦ったり、自分は何もできていないと落ち込んだり。
本書は、そうした他人軸の思考から自分軸に切り替えることの大切さを教えてくれます。
たとえば、同期と同じように昇進を目指す必要はありません。
「自分は人を支えるのが好きだから、縁の下の力持ちとして働く」という価値観も立派な選択です。
自分が心地よく働けるスタイルを選ぶことこそ、キャリアを安定させる土台になります。
実際に、著者たちは「個性とは、自分の中にある“快”の感覚」と表現しています。
これに従って選んだ仕事や働き方は、自分らしさを活かすものになり、自然と成果にもつながりやすくなります。
他人の評価軸から解放されることで、自分らしいキャリアの道が開けるのです。
考察③:「自己分析」は“違和感”から始める
多くの人が「自分の強みがわからない」「やりたいことがない」と悩みます。
本書では、そんなときは無理にポジティブに考えず、“違和感”から自己理解を深めていくことをすすめています。
たとえば、「なんでこの会議は疲れるんだろう?」「あの作業だけはいつも苦手」といった小さな違和感は、個性を知るためのヒントです。
無理に「自分の魅力は何か?」と考えるより、「なぜ嫌なのか」「なぜしっくりこないのか」に目を向けることで、逆に“らしさ”が見えてくることがあります。
これは従来の「自己分析=強み探し」とはまったく違うアプローチです。
ですが、「違和感を分析する」という視点は、無理なく、そして自分に正直になれる方法だと感じました。
自分にフィットする仕事を見つけたい人には、特に役立つ考え方です。
まとめ
『仕事は「個性」で決まる』は、「スキルを伸ばす」「欠点を直す」といった従来の働き方とは違い、「自分らしさを起点にする」ことを軸にしています。
らしさに気づき、自分にとって自然な働き方を見つけることで、結果的に周囲にも貢献できる。
そんな視点は、これからのキャリアを考えるうえで欠かせないものです。
この本が教えてくれるのは、「自分らしく働くこと」が単なる理想論ではなく、持続的に働くための現実的な戦略だということ。
誰かになろうとするのではなく、自分という存在を活かすためにどう動くか。
そのヒントが、ぎゅっと詰まった一冊でした。
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